シンガポールの不動産に関する最新のレポートでは、今年1月~8月、外国人による不動産物件の取引件数がほぼコロナによるパンデミックの前の数値に戻った。国別で最も多いのは中国人で、合計932件のマンションを購入している。

 

レポートによると、500万シンガポールドル以上の高級マンションの購入先は中国が最も多く、全件数のおよそ20%にあたる81件となっている。

 

このレポートは業界のオブザーバーである不動産会社の橙易産業(OrangeTee & Tie)が作成したもので、シンガポールではオフィスの販売件数も急激に増えており、2020年末の400件から去年は700件となっている。購入者で最も知名度があるのは中国の投資会社「復星国際」(Fosun)の創業者の1人である億万長者の梁信軍(Liang Xin Jun)氏である。

 

シンガポールで、中国人による住宅購入件数は2位のマレーシア人のほぼ2倍であり、次いでインド人、アメリカ人、インドネシア人の順となっている。

 

シンガポールは、東南アジアの中でも政治が安定し通貨も堅調であるうえ、租税回避地であることから、世界各地から富裕層を招き寄せている。

 

また、中国人がシンガポールの高級住宅に興味を示すもう一つの大きな理由は、中国の不動産業界が今、深刻な信用問題を抱えていることである。むやみな拡張を続けてきたところへ政府から引き締め措置が講じられたことで、大手のデベロッパーが次々と巨額の債務を抱え、業界全体が不景気にあえぐ状態となっている。

 

こうした中、日本政府が10月11日から外国人観光客の受け入れを再開する。よって、ビジネス用のマルチビザを所有している中国人が日本を次なる不動産投資の対象とすると見られている。東京など首都圈は地価がかなり上昇しているものの、急激な円安により日本での物件購入がしやすくなっている。円は去年より30%も安くなっているので、中国元で購入する場合は事実上30%のプライスダウンとなる。

 

(中国経済新聞 吉川绫乃)