米国における一般オフィスの
賃貸契約交渉と設営

一般オフィスの賃貸契約交渉と
設営の関係者

  • 一般オフィスの開設は、単に候補物件の賃貸契約の交渉だけでなく、一般的に内装工事、IT/電話回線の敷設・関連機器の設置、家具の設置を伴うため、様々な業者が関わります。内装工事についての業者との打ち合わせ、ビルオーナー側との確認を契約交渉と並行して進める必要があります。
  • プロジェクトに関わる主な関係者と役割は以下の通りです。

テナントはブローカー、弁護士、設計/プロジェクトマネジメント(PM)会社、家具、IT/電話、引越し業者のそれぞれと直接契約頂くのが一般的です。
テナント・オーナーのどちらが工事する場合でも、一般的に家具、IT/電話、引越し業者の手配と費用はテナントの責任です。

設計/PM会社はテナント側に立って設計/施工に関するオーナー側との交渉/調整や、テナントが契約されたIT/電話、家具、引越し業者と連携して設計から入居完了までサポートしてくれます。

プロジェクトを成功に導くには、ブローカーだけでなく、適切な設計/PM会社、オフィスリースの交渉経験が豊富な弁護士へ依頼することが非常に重要です。

エイブルは弁護士や各種業者をご紹介し、契約交渉、設計・施工時を通して業者と連携してテナントをサポートします。

契約交渉とオフィス開設の流れ

  • ここでは契約面積で5,000sf(1スクエアフィートは約30㎝四方)くらいまでの一般オフィスを想定して、契約交渉とオフィス設営の流れについてご説明します。
  • 内装工事については、オーナーが施工するケース(オーナー工事)とテナントが施工するケース(テナント工事)があります。
  • テナントの費用負担が比較的少なくて済むオーナー工事を例にとって、契約交渉やオフィス設営に関する主な項目に分けてご説明します。

契約交渉

  • 要件定義は社内での検討に要する期間次第で所要期間は大きく変動します。
  • 物件視察は大抵1か月程度で集中して行うことが多いです。
  • 条件交渉は双方ブローカーが窓口になって主要条件項目をまとめた書面(プロポーザル、オファー、LOIと呼ばれる)で交渉。所要期間の目安は2か月程度です。
  • 主要条件に合意すると、オーナー側が契約書原稿を作成し、双方弁護士が窓口になって交渉・文言調整を行います。
    所要期間の目安は2か月程度です。
  • 契約締結時は、テナントから署名入りの契約書、初回月の賃料、セキュリティデポジット、テナント保険の証書、内装工事の図面(あれば)をオーナーに提出するのが一般的です。
  • 全てが揃ったらオーナー側が署名し、無事に契約締結となります。

期間の目安:契約交渉開始から締結まで4か月程度

内装工事

  • 有力な物件候補が見つかったら、設計/プロマネを委託できる業者にテストフィット(簡易図面)を作成してもらい、内装のレイアウトの検討に入ります。
  • レイアウトが決まったら基本設計図面を作成し、契約交渉と並行してオーナーと工事内容、コスト分担などを交渉・確認し契約締結までに合意します。工事内容やオーナーの方針によっては、工事の一部は契約締結後に施工業者に見積を取って採否を判断することもあります。
  • 契約締結後、オーナーは合意した図面をベースに工事申請のための図面作成に入ります。
  • 作成した図面をベースに施工業者に入札依頼し選定します。
  • 選定された施工業者が建築局に工事申請し、許可が下りたら速やかに施工を開始します。
  • 物件の原状・サイズ・工事内容にもよりますが、契約締結から竣工まで計画段階では7か月程度見ておくことをお勧めします。
  • 内装工事が不要、もしくは工事申請が不要な工事のみの場合、申請図面の準備から工事許可までの期間と施工期間が大幅に短縮されます。
  • 竣工時には、オーナー、テナント、関係業者が一緒に現場確認(Walk-Through)を実施します。未完部分、不具合箇所をリスト(パンチリスト)にまとめて、一般的には竣工後30日以内にオーナーが対応します。
  • 竣工後にCommecement Letterと言って契約期間の開始日、フリーレント期間、契約期限を明記した書面をオーナーが発行するのが一般的です。

期間の目安:契約締結から竣工まで7か月程度

IT関連

  • テストフィットでレイアウトが決まり、基本設計に入るあたりからIT/電話配線の設計に入ります。大抵設計/PM業者がIT業者に設計作業に取り掛かってもらう依頼があります。
  • 基本設計図面には、IT/電話関連のアウトレットと電源の数やタイプを記した図面が添付されます。
  • 契約締結後にIT/電話関連も速やかに発注し、内装工事中にその業者とIT業者が連携/調整して回線の敷設、設置作業を行います。
  • 家具のタイプにもよりますが、IT/電話配線を内蔵している家具の場合、家具の設置後に接続作業と通信のテストを行います。

家具

  • 基本設計時にはある程度どういったサイズ、タイプの家具を設置するか図面に反映させ、契約締結時までに決定しておきます。
  • 家具は受注生産のものも多いので、納期等応じて契約締結後速やかに発注します。
  • オーナーやその施工業者にもよりますが、内装工事が終盤になれば、内装工事中に現場への家具の搬入・組立・設置作業を許可してくれることが多いです。
  • 家具の搬入にはビルの貨物エレベーターを予約し、業者の保険証書をオーナーに事前に提出します。
  • 設置後、敷設済みのIT/電話配線との接続、テストを行います。

引越し

  • 移転の場合、業者は移転先で流用する既存家具等の移動だけでなく、不要な家具等の廃棄を請け負ってくれます。
  • 移転の見積もりを出すには、それらを分類して業者に見積もり依頼する必要があります。
  • 引越し業者へは賃貸契約締結後、ラフな竣工予定日(=移転予定日)に対応可能か確認しておき、入居可能日が具体的になったら確定します。
  • 移転時には退去するビル、移転先のビルの貨物エレベーターを予約したり、引越し業者の保険証書を事前に各ビルオーナーへ提出する必要があります。
  • 移転の場合、家具等の搬出入は時間外しか許可しないビルも多く、引越しは週末に行なうテナントが多いです。

オフィス設営費用の概算
(オーナー工事の場合)

契約期間が5年以上の場合、一般的にオーナーはビルの標準内装仕様の範囲は全額工事費を負担します。
以下の表は、ビルの標準内装仕様を前提に、一部だけ仕様をカスタマイズすることを想定した概算です。

契約面積 5000sfでの例

項目単価
(目安)
単価
(例)
予測額
(例)
備考
設計/
申請
内装設計 $5.0 $10.0 $6.0 $30,000 テストフィット・基本設計図面作成。設計/PM会社にまとめて依頼するのが一般的。
申請関連 $- $8.0 $-$-オーナーが申請図作成・申請を行うのが一般的。
小計 $5.0 $18.0 $6.0 $30,000
内装工事/
管理
内装工事 $- $30.0 $15.0 $75,000 ビルの標準仕様以外のテナント負担分。オフィス受付部、その他の特注部はテナント負担となるのが一般的。
PM委託 $4.0 $10.0 $8.0 $40,000 PMを行う業者への費用。内装設計とセットで設計/PM会社へ依頼するのが一般的。
プロジェクトの期間によって料金設定するケースあり。
小計 $4.0 $40.0 $23.0 $115,000
その他
(テナント)
家具 $- $50.0 $30.0 $150,000 日系企業の一般的な家具を全て購入する場合を想定。
IT/電話/
セキュリティ
$5.0 $30.0 $15.0 $75,000 オフィスサイズよりも座席数、一席当たりの回線数や購入/設置する機器により大幅に変動。
業者さんへ見積依頼頂くのがおすすめ。
引っ越し $3.0 $8.0 $6.0 $30,000 家具の解体、移動、組み立て、不要家具の廃棄に掛かる費用。マンハッタン内のUnion加盟ビル間での引っ越しを想定。
新規開設の場合、この費用は不要。
小計 $8.0 $88.0 $51.0 $255,000
設営費用計$17.0 $146.0 $80.0 $400,000

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